003.消える魔球

http://sinkaron.tokinko.net >何でもありな100のお題  その1

「犠牲者が出てからでは遅い」
 そう訴える声も大きかったし、危険視する者も多数居たにも関わらずそのスポーツの人気が衰える事は無かった。むしろ上昇する一方である。
 人が革新の中で得た能力、その超常能力を使って行われるスポーツ。
 何しろそれらは派手で人目を引く。さらにはその力の使い方次第で全く予想できない展開を見せることも多く、見ている方としては飽きが来ないのだろう。
 勿論中には戦術がおかしくなると言う理由で忌避するものたちもいたのだが、時を経て、その力が浸透して行くに従って声も消えていった。それだけ、その力が日常に浸透していったと言うことなのだろう。



 だが、ある時期を境にその力をスポーツで行うことは許可されなくなった。監視装置が設けられ、力を用いたプレイは反則として厳重に罰せられるようになった。
 その理由になったのは、野球におけるある冗談の様な出来事だったと言われている。
 投手である彼は言ったのである。
「俺の消える魔球は誰にも見えない。だから打つこともできない。キャッチャーもとることはできない。一度消えた魔球はもう二度と現れることはない」
 ……果たして、それは本当に「消える魔球」だったのか。そもそもそれが野球として成立しているのか。
 ピッチャーマウントには、微かにボールの破片が残っているだけだった。

ね?(何が