004.甘い声

http://sinkaron.tokinko.net >何でもありな100のお題  その1

 彼女はみんなに「可愛く無い」と言われていました。不細工だと蔑まれたこともありました。
 それでも、彼女は嫌われていたわけではありません。彼女は、とても歌が上手で、それはすばらしい声の持ち主だったのです。
 みんなが彼女の歌を褒めました。みんなが彼女の声を褒めました。ですが、誰も彼女の恋人にはなってくれませんでした。彼女はみんなの為に歌いましたが、みんなは彼女の歌しか聴いていませんでした。
 ところがある日、彼女は文句のつけようもないほど素敵な旦那様と結婚しました。旦那様はお金持ちでもあったので、彼女はたくさんの幸せを一気に掴むことになったのです。

 驚いたのは周りの人たちでした。みんなはこぞって旦那様に問いました。何も言わなくても、何かをしなくても彼女は歌ってくれる。だから結婚なんてことまでしなくてもいいのに、と。
 旦那様はやや皮肉げな笑みで答えました。
「ちょっとした冒険心だったんだけどね、今じゃもう虜さ。理由? そうだね……、そのときの彼女の声は、歌うときよりもよっぽど素敵だったのさ。癖になるほどね」
 もう彼女以外とは考えられないよ、とまで旦那様は言いました。


 二人は喧嘩もせず、末永く暮らしました。
 彼女のそのときの声を知るのは旦那様だけとなりました。

 ……果たして、それはどんな時に出す、どんな素敵な声だったのでしょう?

続ける気はあるんだよ、っと。
出来はさておきなw